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ふたりでほどく
「彩月」
聞き慣れた愛おしい声に誘われて、瞼をうっすらと開ける。
目の前には、暗い部屋と肌触りのいいクリーム色の毛布。
全身を包み込む心地のいい温もりに、わたしはもう一度瞼を閉じた。
「また寝ちゃった?」
その優しい声色に、まだ起きてるよ、と返事をしたいのに眠気が勝って唇が開かない。
返事をするのは諦めて、声がするほうとは反対側に寝返りを打とうと身体を動かすも、まったく自由がきかないことに気付く。
さっきまで重たかった瞼を、今度はパチリと開いた。
「あ、起きた」
悠李は幸せそうな顔つきのまま身体を起こすと、微笑みを称えてわたしの唇にキスを落とした。
身体の自由が戻り、さっきまで抱きしめられていたんだと分かった途端、両手首をベッドに縫い付けられて再び自由がきかなくなる。
お互い下着だけしか身に着けていなかったことを思い出し、急に恥ずかしくなったわたしは悠李から逃げるように顔を逸らした。
「そういうとこ、ほんと変わんないな。もう慣れたと思ってた」
「慣れるわけないじゃん。恥ずかしいもん」
「もう何回もしてんのに?」
「回数なんか関係ないよ。わたしはこれからもずっとこうだと思う」
「本気で言ってんの? 可愛いすぎ。どれだけ夢中にさせたら気がすむんだよ」
悠李は、赤ちゃんみたいに目尻を下げて無邪気に笑った。
わたしの大好きな笑顔だ。
もう何度も見ているのに、この笑顔を見る度に胸がぎゅっと鷲掴みにされて苦しくなる。
どっちが夢中にさせているんだろう。
ちらりと見上げると、素肌を晒した悠李がわたしの様子を眺めている。
「悠李は余裕そうだね。わたしは全然、余裕なんかないのに」
「そう見えるだけだろ」
「そうかなあ。そんなことないと思うけ……」
話し終える前に、わたしの唇が悠李の唇で塞がれる。
悠李に求められていると実感できる、貪るようなキス。
舌を絡めとられ、とろとろとかき回されると身体中の力が抜けていく。
悠李の首に両腕を回して抱きしめるとキスがより一層深くなって、求めていた圧迫感がわたしの唇を包み込んだ。
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