ふたりでつむぐ

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 悠李は、優しさの滲んだ愛嬌たっぷりの顔でけらけらと笑い声を立てた。  いつもそうだ。何が面白いのか、こうして事あるごとにわたしをからかっては楽しそうに笑っている。  わたしも本気で怒ればいいのに、たまに見せる悠李の赤ちゃんみたいな笑顔につられて、気が付けば一緒に笑ってしまう。  実は、この瞬間が大好きだったりする。  どうしたって叶わないこの片想いが、少しだけ報われた気分になるからだ。  今日のクリスマスパーティーだって、ちょっとでも悠李に会いたくて参加した。  来て良かった。込み上げてくる嬉しさを必死で隠す。それさえも楽しい。  けれど、それもすぐに終わりを告げた。 「ゆうり〜、こんなとこに座ってないであっちで一緒に踊ろうよ」  甘い声の女の子が、悠李の背後から抱きつく。  いつもよりも低い位置にある悠李の頭に自分の胸を押し付けて、すごく大胆だ。  彼女は、目鼻立ちのくっきりした魅力的な容姿で学内でとても目立つ存在だ。  今日は黒いオフショルダーのワンピースを着ていて、さらに可愛い。  悠李と並んだら凄くお似合いなんじゃないだろうか。  いきなり抱き着かれた悠李は驚きもせず、身体を離しながら後ろを振り返った。 「は? 酔っ払ってんの? 早くね」 「酔ってないよ。ね、この子と喋ってたって面白くないよ。早く一緒に行こ」  わたしに対しては使わない、悠李のくだけた口調。  いつも優しく話しかけてもらえるのは嬉しいけど、どこか距離を感じてしまうのは贅沢なんだろうか。  わたしにも悠李の周りにいる友達のように話しかけて欲しい―――なんて。  やきもちをやく資格なんかわたしにはないのに彼女を羨ましく思うのは、この二人が学内で一緒にいるところをよく見かけるからかもしれない。  誰とも付き合わない、遊び人の悠李の本命は彼女だという噂も聞いたことがある。  このまま二人は行ってしまうんだろう―――そう思っていたら、悠李は彼女の腕を素っ気なく解いてしまった。 「べたべた触んな。一人で行けよ」   後ろを向いた悠李の顔は、わたしには見えなかった。  代わりに、悠李としっかり目を合わせた彼女の顔は真正面からよく見えた。  またたく間にその表情は沈んだものに変わり、彼女から発せられていた輝くようなオーラが消えていく。  彼女は何も言わず、悠李の元を去って行った。 「……ごめん」 「何で彩月(さつき)が謝んの」  わたしのせいで、とは何となく言えなかった。  ソワソワと落ち着かないまま、隣に目をやる。  悠李もわたしを見ていたようで、お互いの視線がパチリと重なった。
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