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たっくんの夏休み
七月。
私とたっくんがお付き合いをしてから、初めての夏がきた。
「あ〜涼しい」
猛暑続きでアスファルトが溶けている街の中にあるオアシス、保護猫カフェ『ゆるにゃんスペース』に入ると、涼しい冷房の風とともにたっくんの舎弟である可児朔太郎くんが笑顔で迎えてくれた。
彼はここで半年以上バイトをしている。すっかり接客が板についているみたい。
「涼みに来てくれて嬉しいっす、竜也さん!」
「おう」
照れ屋なたっくんは、無愛想な挨拶をしてテキパキと手を消毒する。
ふと気づけば、たっくんに溺愛されている黒猫「タツヤ」がすでに彼の足元で尻尾をフリフリしていた。
真っ赤な髪で目つきの悪い最強ヤンキーと呼ばれているたっくんと平凡な私がお付き合いを始めてからはや10ヶ月……。
「たっくん、私にも抱っこさせて!」
「おう」
たっくんに抱っこされていたタツヤを両手で受け取ろうとしたら、私とたっくんのおでこがくっついた。
途端にたっくんの顔は激辛ラーメンを食べたみたいに真っ赤になって、湯気がプシュウウウウと立ち上った。
「か、か、か、顔っ、そんなに近づけんじゃねーよっ! 照れんだろ!」
「ご、ごめんなさいっ!」
安心してください。
たっくんはまだピュアですよ。
って、誰に言ってるんだろう私。
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