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「やあ。ここにいたんだ。探したよ」
私たちが来店してから30分経った頃、木更先輩がやってきた。
私たちを見つけると、彼は絵に描いたようなスマイルを見せる。
学園の王子様だなんて呼ばれている先輩に恋をしていた時もあったけど……今の私はたっくん一筋で、その気持ちは超合金ロボのように揺るがない。
でもたっくんは今でも木更先輩に対して敵意剥き出しのようで、眼光鋭く先輩を睨みつけた。
「何しに来た?」
「そんなに警戒しないでよ。今日は君たちに楽しい話を持ってきたんだ」
「楽しい話?」
「うん。単刀直入に聞こうか。今週末、暇?」
今週末も何も、私は夏休みの間ずっと暇だ。バイトをしているわけでもないし、塾に通っているわけでもない。
たっくんはボクシングジムに通ったり兄の灰士さんや舎弟の人たちと会ったりしているようで、実は丸一日デートする日はあまりなかった。同じアパートにいるからいつでも会えるっていう安心感はあるけど、本音を言うともっと会いたい。
いっそのこともう同棲したいくらい。
って、思っているのは私だけなのかなあ……。
私が卒業するまではそんなこと無理だって分かっているんだけど、一緒に暮らせたらなあっていう妄想が365日走り続けている。
すると、先輩がニコッと笑いながら言った。
「実は、大学教授をしている僕の父親が論文を書くために海沿いにある別荘を借りたんだけど、運悪く本人がインフルエンザにかかってしまって行けなくなったんだ。せっかくだから、君たちを招待しようと思って。もし暇なら、泊まりで遊びに行かないか?」
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