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「海沿いの別荘⁉︎ すごーい!」
「近くに海水浴場もあるし、夜は週末ごとに花火と夜店ができるらしいんだ。水着や浴衣を持って行って遊ぼうよ」
先輩はまっすぐ私に向かって微笑みかけている。
「夢乃ちゃんの水着、すごく楽しみだな。もちろん、浴衣もね」
「えっ?」
誘うような色っぽい眼差しに目を瞬かせた瞬間、私の隣でたっくんが地獄の業火を召喚させたような黒いオーラを放った。
「夢乃に手を出すな……! ブッ殺すぞ!」
私と先輩の間に割って入り、たっくんが先輩とキスしそうなほどの至近距離で睨みを利かす。たっくんにその気はないんだろうけど、なんか危なくて私はハラハラしてしまった。
「夢乃ちゃんが心配なら、君も同行したらいいじゃないか」
「ったりめーだ! 夢乃と二人きりになんかさせるかよ!」
「決まりだね」
先輩は嬉しそうに笑った。
最初から先輩の目的はたっくんじゃないかと思ってしまうような笑顔だなあ。
「ちょっと待ってくださいっす!」
そこへ、可児くんも割り込んできた。
「竜也さんが行くなら俺も行きたいっす! 海とか花火とかめちゃくちゃ好きだしっ! ちなみに、俺ここの厨房で鍛えたんで、焼きそばとかめっちゃうまく作るっすよ! 食事作りなら任せてください!」
「お前、バイトはいいのか」
「クリスマスの時に休んだ奴らと交渉して休みもらうんで、大丈夫っす!」
「まあ、食事作ってもらえるならいいか……」
下僕として使っても。
とでも言いたげな顔をしている先輩がちょっぴり怖い。
「ああそれから、別荘がちょっと駅から離れたところにあるから、車を運転できる人も居たら便利なんだけど。誰か知らない?」
「車か〜」
私もたっくんもまだ免許は持っていない。可児くんも表情を見る限り持っていないようだ。するとたっくんがちょっと嫌そうな顔をしつつ、
「灰士が……持ってるかも」
と呟いた。
「灰士さん! 良いね!」
「誰?」
「たっくんのお兄さんです! すっごくいい人!」
たっくんの頼みなら喜んで仲間に加わってくれそう。
すぐにメールで灰士さんの都合を聞いたら、案の定オッケーの返事が来た。
「それじゃ、今度の土曜日の朝九時に、この店の前に集合で」
ワクワクの予定まであと二日だ。
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