癌細胞を私に下さい

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「死にたくない」 「まだやりたい事が沢山あるのに」 「家族を残して死にたくない」 そう嘆くのなら どうか私に あなたの癌細胞を下さい 別れたくない家族や友人がいるのなら まだ若くて将来の夢があるのなら 生きていてほしいと願ってくれる 真っ当な家族がいるのなら あなたの癌細胞を私に下さい 私はもう ほとほと疲れてしまったのです 身勝手で醜い人間達の中で 死んだように息を潜めて生きている事に 私には 生きていてほしいなんて言ってくれる家族は いませんから その為に辛い治療をする必要など無いのです 私は自分が死ぬ迄の余生がどれ位なのか知りたいだけなので 痛みを和らげる緩和ケアだけで 充分なのです 子供の頃から死ねない病気ばかりで それでも仕事をして 自分を養わなければならない 苦痛なだけの作業を 報われない仕事を ずっとやり続けなければならないのです まるで癌患者の 辛い副作用を伴う治療のように 自分で何もかも終わらせてしまえれば簡単なのですが 人間 そう簡単には死ねないものですね なかなか上手く死ねません 残ったのは腕や足に刻まれた無数の傷痕だけで 私は何もかも失いました いえ、最初から何も持ってなどいなかったのだと やはり私は この世に生まれて来るべきではなかったのだと そう思い知らされただけでした 今はもう 自ら積極的に死のうという気力すらありません ただ日々をなんとかやり過ごして やりたい事も特に無く ”やるべき事”を ほんの少しだけやって 空っぽな状態で生きているのです なので 「あと何ヶ月」と余命宣告をされたら 自分に残された時間が分かったら もう本当に”やらなければならない最低限の事”だけをして あとは自由に暮らしたいのです  やりたくない事は もう何ひとつやりたくないのです 今はもう 食事をする事さえ億劫なのです ただ一つ私が気掛かりなのは 私の愛する鳥達が 私の死後 私の遺体が腐って腐敗臭が表に漂う迄 誰からも発見されずに 餓死してしまう事だけなのです なのでこうして 鳥達の為に生きていますが 以前 脳出血を起こしているので 突然死が一番困るのです 私の死後 鳥の引き取りをお願いしている保護団体に ”鳥が生きているうちに”連絡してくれる人がいなければ なので私は 自分の余命を知りたいのです そうすれば いよいよタイムリミットが迫った時には 自身で生きているうちに手続きや鳥の引き取り料も全て支払って 鳥を安全な場所に保護してもらえる 私は鳥達を道連れに死ぬ事だけは 出来ないのです だから あなたの癌細胞を私に下さい 生きたくても生きられない人が沢山いるのにと 死にたがる私を責めるなら その人達の死を 全部私が背負って死にましょう 有能なドクターに 神様に 森羅万象を司る全ての神々に どうか祈って 私の死と引き換えに 生きたいと願っている全ての人が 生き物が 幸せに生きられるように 生きたいのに生きられない幸せな人間を創ったのも 死にたいのに生かされている 私のように不幸な人間を創ったのも 全ては 神様の悪戯なのだから (2024年7月12日作の詩) もう長くは生きられない病気になっても”生きたい”と思えるのは、その人が幸せな環境にいるからだと思います 生き地獄のような環境だったら、”いっそ死にたい”と思うのが普通ではないでしょうか? <無断転載・複写等禁止>
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