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「お前のせいで大切な予定が台無しなんだよ!」
と言ってやった。そして、なだめる先生をよそに
「それに武器を使うなんて、この卑怯者!」
と追い打ちをかけてやった。すると、彼は静かにポロポロと大粒の涙を流し始めた。予想外の出来事に戸惑った。
思えば、彼はクラスの中ではまともな方だった。理由もなくこんな事をするようなタイプではないと分かっていたが、だからこそ理由が知りたい。そうでないと、もう終わってしまったかもしれない恋の諦めがつかなかったのだ。
「悪かった」
ようやく彼から引き出した言葉はこの一言だった。涙は止まらない。こうも泣かれてしまっては、こちらもそれ以上責める事ができなかった。
「俺も言い過ぎたよ。ごめん」
そう返すしかなかった。全く意味不明な展開であったが、半ば強引にそれで仲直りという事になった。先生は多忙だった。それに、お説教は裁判や懲罰ではない。お互いに頭を下げれば、何はともあれ一件落着なのである。
子どもの喧嘩は不思議なもので、仲直りすれば原因などどうでも良くなってしまう。チョコボールとはその後すんなり打ち解けた。
その後、ある噂が流れた。一通目の手紙をくれた女子とチョコボールが付き合い始めたというものだった。チョコボールからの熱烈なアプローチだった。
今となっては、その「はたしじょう」を誰が何の目的で送りつけてきたのか、よく分かる。その想いは数年の時を経て相手に届き、その相手は今、懐かしさに不思議と笑みがこぼれている。
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