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どういうことだ?
何度も玄関のチャイムを鳴らしたが出てこない。
「愛莉? いるのか? 愛莉?」
玄関のドアを叩いても中から返事はない。
そっと玄関のドアに触れるとドアはあっさりと開いた。
1LDKの愛莉の部屋は玄関を入ると五歩ほどで扉がある。
リビングの扉を開けた大輝は床に寝かされた愛莉と見知らぬ白衣の男二人に驚いた。
「お前達は誰だ! 愛莉に何を!」
愛莉には電気コードのようなものがいくつもつけられ、その先にはノートパソコン。
その雰囲気は普通じゃない。
まるでロボットのような扱いの愛莉に大輝は目を見開いた。
「愛莉!」
駆け寄ろうと思った大輝は茶髪の白衣の男に押さえられ、もう一人の金髪の男がノートパソコンを操作していく。
黒い画面に流れていく文字。
立ち上がっては消える画面。
一体何なんだ?
こいつらは何をしている?
拘束されたまま大輝は愛莉と金髪の白衣の男を見続けた。
「へぇ。すごいな」
ノートパソコンを見ていた金髪の男が嬉しそうに笑う。
大輝を拘束していた茶髪の男は「どうした?」と聞き返した。
「彼のこと『好き』だって」
優しくて一緒にいて楽しいという感情が生まれていると金髪の男はノートパソコンのモニターを指差した。
初めて会った時、折れたヒールを直してくれた彼。
『尊敬』。
優しくしてくれた。
『うれしい』。
黒い画面をスクロールさせながら嬉しそうに眺める金髪の男性。
もっと一緒にいたい。
彼が『好き』。
「こんな感情、プログラミングされていないのに」
ね、面白いでしょう? と金髪の男が笑う。
「プログラミング……?」
何を言っているんだ?
大輝が眉間にシワを寄せると、大輝を拘束している茶髪の男が「あれはアンドロイドだ」と答えた。
「使用期限は一年間。今日の午前0時に電池切れ。人工知能、機械学習を駆使してどこまで人と生活できるか実験するために作られた試作品58号アイリちゃん」
好きだという感情ができたというのはすごい成果だと喜ぶ金髪の男。
「試作品……?」
大輝はギュッと拳を握った。
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