再会と別れ

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そこにいたのは真綾だった。 「ま、あや」 掠れた声で名前を呟く。 「久しぶり、聖夜くん」 彼女はにっこりと笑った。 瞳から涙が溢れでた。 ずっと会いたかった。 ずっと謝りたかった。 「…会いたかった」 真綾が駆け寄り、僕を優しく抱きしめた。 声が震えている。 僕は恐る恐る真綾の腰に手を添える。 「僕も、会いたかった……」 しばらくの間、僕たちは 会えなかった時間を 埋めるように抱きしめあっていた。 真綾はベッド横の椅子に腰掛けて微笑んだ。 「剛くんから聞いたの。聖夜くんがいる病院」 「そうなんだ」 「うん。…聖夜くん、あのときはごめんね。 わたし、聖夜くんに酷いこと言っちゃった。 別れようって言葉も言うつもりじゃなかったのに」 真綾が顔を悲痛に歪ませる。 「真綾…謝るのはこっちだよ。 僕はずっと、真綾に会って謝りたかったんだ。 だから、最期に会えて本当によかった。 真綾、酷いことを言ってごめん。 病気になって改めて実感した。 きっと弟さんとは病気の種類は違うけど こんなにも苦しいんだって。 本当にごめん」 僕は感覚がなくなっていくのを感じながら やっと目を開けている状態で謝る。 あぁ、やっと言えた。 真綾は泣きそうな顔になって小さな子供のように 首を横に振った。 「最期だなんて、言わないでよ。 わたしとずっと一緒にいてよ。 あの時のことはもう許してるから。 わたしも反省してるから。 だから、行かないで、聖夜くん」 真綾が僕を握る手を強く握りなおしたのが見えた。 「それって、プロポーズか?」 「そうだよ。聖夜くん、…大好きだよ」 目を開けていられなくなってきた。 ありがとう。真綾。 僕も、ずっと 「大好きだよ…」 無機質な機械音が病室に響き 僕に縋りつき泣いている真綾がぼやけて 見えたのを最期に僕は旅立った。 真綾、こんな僕を愛してくれてありがとう。 あと一回だけ君に会えて良かったよ。 いつかまた会えたら、陽だまりの中で笑い合おう。 (終わり)
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