7人が本棚に入れています
本棚に追加
「聖夜あのさ……」
帰りに剛とバス停でバスを待っていると、
剛がおもむろに切り出した。
「何だよ、もったいぶって」
「実は、俺見ちゃったんだよ。」
「何を?ユーレイか?」
「…橘さんが他の男と歩いてるところ」
「はぁ?」
剛はスマホを操作して、画面を僕に突き出してきた。
楽しそうに笑っている真綾の目の先には
背の高い男の後ろ姿。
「まさか。真綾に限ってありえないよ」
僕はスマホを押し返す。
「でも、よく見ろよ、コレ」
剛が写真をズームすると後ろの建物の名前が見えた。
…ここ、ラブホテルじゃないか。
「え……」
いやいやいや、真綾に限ってそれはない。
僕はある考えを振り払った。
けど、剛は言う。
「橘さん、浮気してるんだよ!」
「何言ってんだよ、そんなわけないじゃないか。
ただ通りすがっただけかもしれないだろ!」
それでも剛は納得のいかない表情を見せる。
「分かったよ。真綾に聞いてみるから」
僕は胸に残るモヤモヤを落ち着かせるように
拳を握りしめた。
最初のコメントを投稿しよう!