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「洸太!洸太!洸太!」
昼休み、自席で寝ていたら自分の名前を連呼されて無理矢理起きる羽目になった。この声は晶だな。
晶は僕の席に着くまで、僕の名前を連呼してきた。
「洸太ぁ!」
「…何だよ。僕は選挙候補者じゃないんだけど。」
「聞いたか!?」
「何を?」
晶はいつも話を刻む癖がある。最初からハッキリ全部言って欲しい。
「隣のクラスの宝生が、呪告で死んじまったらしい。」
「……え!?あの宝生が?」
僕は思わず立ち上がった。宝生とは中学から一緒で、昨日も一緒に下校した仲だ。昨日は何も言ってなかったけどな。
「これで今年に入って7人目だぜ!皆、お盛んだよな。」
「…宝生、良い奴だったのにな。」
「女にはその良さが分からなかったってことだ。」
笑いながら言う晶を僕は睨み付けた。
「…あ、そうだ、次の授業の準備しないと。」
晶は僕の眼力に負けて教室から逃げるように出ていった。僕は力が抜けたように椅子に腰掛けた。
「はぁ…呪告か。」
呪告、それは世間で呼ばれている呪いの名称だ。
『この世界に住む人間は、人生で愛を伝える告白を行い失敗することは2回までしか許されない。3回目には命を落とすことになる。』
それが長年根付いている呪いの内容だ。
そんな馬鹿な呪いがあるものか。初めて小学校の授業で教師から語られた時はそう思った。けど、何度も何度も繰り返し呪いについての教育を受けていく内に、本当なんだと理解していった。
理解した上でだが、この呪いは人生で絶対的に困るものなのか?という疑問に辿り着いた。人ってそんなに誰かに告白をしたいものなのだろうか。
中学生の頃には既に呪いによって亡くなった同級生がいた。何でなんだろうと僕は理解が出来なかった。
でも、中学3年生の夏に少し呪いで亡くなった同級生のことを理解する出来事があった。
初恋だ。
中学3年生で初恋というのは遅いと言われるかもしれない。確かに今までも、あの子可愛いなと思ったことはあった。でも、今回の衝撃を経験して、これが初めての恋心、初恋なんだと理解した。
それは転校生としてやってきたハーフのアリアという同級生だった。
アリアは僕の隣の席になった。一目で可愛いと思うビジュアルに加え、少し辿々しい日本語に可愛いらしい声。何よりいつもニコニコと癒される笑顔で僕に接してくれていた。
僕は初日にアリアに恋心を抱き、それからの日々は学校が天国に思えるほどの魅力的な場所に変わり、毎日が楽しくて仕方なかった。
アリアと出会って数ヶ月が経った冬のある日、僕もアリアに人生で初めて告白をした。呪告のことが頭によぎったが、3回のうちのまだ1回目だから平気だろうという思いと、何よりアリアにならその貴重な1回を使っても後悔は無いという思いが強かった。
夕暮れの教室で、僕はアリアを呼び出して、オレンジ色に染まる教室の中で僕は思いを伝えた。
アリアはニコッと笑った後、うつ向いて首を横に振った。
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