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初恋は見事に玉砕したわけだ。
翌日、アリアは気まずそうな表情で僕の隣に座ったが、僕がいつも通りに話し掛けると安心したのか、いつもの笑顔を見せてくれた。
僕はまだ彼女を諦めたくはない。素直にそう思った。
年が明けると、受験生である僕たちは高校受験という地獄が待ち受けていた。公立の高校に進む予定だった僕だが、アリアも同じ高校を希望していることを知り、試験にも力が入った。
けれど、結果的に僕はアリアよりも1つ下の偏差値の高校にしか受からなかった。そうなると、アリアとこうして同じ時間、同じ空間で過ごせるのも、あと1か月ほどしかない。僕は今まで以上にアリアを愛しく思った。
別々の高校になることが分かった日から、僕は何回も何回も、アリアにもう一度告白しようと考えた。例えまた断られても2回目だから命を落とすことはない。ただ、これで失敗したらもう後が無い。人生100年と言われている中でまだ15年しか活きていないのに使い切ってしまっていいのか。2回しか失敗出来ないなんて少な過ぎると、僕はこの呪いを作った呪術師を初めて恨んだ。
アリアが好きだ。アリアと恋人同士になりたい。でも、これで失敗をしたら、その次に告白する時は、正に命懸けの告白となってしまう…。
そんな葛藤と毎日付き合い、あっという間に卒業式の日を迎えてしまった。3年生の夏に転校してきたアリアは、僕たちよりもこの学校に対する思い入れはすくないはずなのに、卒業式の最中はアリアはずっと涙を流していた。
そして、その横顔が余りに美しく見えた僕は、卒業式の最中ずっとアリアを視界に入れていた。
卒業式はいつの間にか終わっていた。その後は教室に戻って最後のクラスミーティングの時間となった。きっと担任の教師は、僕たちのために寝ずに考えた立派な激励の言葉を言ってくれたのだろう。けれど、頭から足の先までアリアのことでいっぱいの僕には、一言も脳に留める隙間は無く、すり抜けていった。
「…洸太くん。」
アリアが僕の名前を呼んだ。僕は椅子がガタッと動くほど驚いて、破裂しそうな心臓の鼓動を何とか抑えながらゆっくりとアリアの方を向いた。
「洸太くん、私ね、洸太くんの横の席で良かった。毎日楽しかったよ。本当にありがとうね。」
ニッコリと笑ったアリアは今までで一番愛おしく思った。
「…僕もアリアの横で楽しかった。」
「…洸太くん。」
アリアはそっとハンカチを僕に渡してくれた。僕は自分が泣いていることに気が付いた。
「そのハンカチあげるね。私だと思って大事にして。」
僕はそのハンカチで涙は拭わなかった。
「あ、あの…。」
僕は鞄に付けていた星型のキーホルダーを急いで外してアリアに渡した。
「これは僕から。こんなんでごめん、でも交換にしたくて…。」
アリアは嬉しそうな表情をし、キーホルダーを受け取ってくれた。僕はもう思いを止められなかった。そのままアリアの手を握り、僕はアリアの目を見つめた。
「…洸太くん?」
「アリア…僕はやっぱり君が好きだ。僕と付き合ってくれませんか?」
クラス中の視線を集める中、僕は2回目の告白をした。
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