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僕は何十分トイレに籠もっていただろうか。きっともうアリアは、僕を見た気まずさでこのショッピングモールには居ないだろう。
このままアリアのことばかり考えていると、僕はまたアリアに自分の思いを伝えたくなってしまう。次の告白は正に命懸けの告白となる。でも、2回も断られていて3回目が成功する確率なんてほぼ0パーセントだろう。
僕は気持ちが暴走すると、楽になるために告白をしてしまいそうな気がする。この楽というのは死ぬためじゃない、気持ちを吐いて楽になるためという意味だ。暴走した時に命が掛かったなんてことは頭には多分無い。自分のことだから、自分の性格がよく分かる。
だから、アリアにはもう二度と会ってはいけないんだ。
そんなことを考え、ふらつきながらトイレから出た。溜め息をつきながら視線を上げると、数秒前の僕の決意は一瞬で砕かれた。
数メートル先にアリアがこちらを見て立っていたのだ。
「…アリア、何で。」
アリアはニコッと微笑みながら僕に駆け寄ってきた。
…駄目だ、こっちに来ないでくれ。
実際の僕は、そのアリアの輝いて見える姿に目を奪われていた。
「洸太くん!」
アリアは僕の気持ちなど知る由もないだろう。変わらぬ可愛さを纏ったまま、僕に微笑み掛けてきた。
「…アリア、久しぶり。元気?」
「うん、見たとおり元気だよ。洸太くんは?」
「う、うん。まぁぼちぼちかな。」
「そっか。フフフ、久しぶりに洸太くんに会えて嬉しい。私ね、高校生になってスマホ買ったの!」
アリアは鞄からはスマホを取り出し僕に見せつけてきた。
「親が厳しかったから、中学生の時は買ってもらえなかったんだ。ねぇ、洸太くん、私とライン交換しよ。」
本当ならこんなに嬉しいことはない。アリアと毎日でも連絡が取れる武器を手に入れることが出来るんだから。
でも、仮に毎日連絡出来たら本当にそれは幸せなことなのだろうか。思いが膨らむだけで、安易に告白も出来ない世界。毎日悶々として、マイナス思考になるだけじゃないのか。
僕はスマホが入っているポケットに手を入れたまま動きを止めた。
「…洸太くん?」
「あ、あのさ、僕の気持ち知ってるよね?」
僕は少し冷たい口調で言った。アリアの顔から微笑みが消えた。
「…うん。」
「アリアと連絡取れるのは勿論嬉しいよ。でも…。」
「そ、そうだよね。私が勝手すぎるよね、ごめんなさい。」
アリアは泣くのを我慢しているような表情を見せた。
「アリア!」
さっきの男性が背後からアリアを呼んだ。
「…あの男の人は、アリアの彼氏?」
もうどうにでもなれと思って僕は勢いのまま聞いた。心臓が大きく鼓動しているのを必死に隠しながら。
…これでいいんだ。これで…。
すると、アリアは僕の予想とは違い、首を大きく横に振った。
「彼氏じゃないよ。…お兄ちゃん。」
「…へ?」
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