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それから12クラスあわせて校歌の練習をした。『汚れを知らぬ青春の〜』の部分のときだけ穂乃香が私の隣で特に『青春』の部分だけ誇張して歌った。
大桃のことを好きだということがバレバレだったらしい。
校歌の練習の後は般若心経の唱え方の練習をした。この学校は仏教系の学校ではないけれど、昔からの伝統で般若心経をカンペなしで覚えることになっていた。
「えー、今日の昼のオリエンテーションはここまで。夕食の時間まで各自部屋にいること」
大島先生がそう言うと、各自解散となった。
梨沙が体育館から出てくると、なんと大桃がいた。
「小峰さん、ちょっといい?」
「うん」
梨沙は穂乃香たちと一旦別れて、大桃と外に出た。
「小峰さんがいるクラスのほうばかり見ちゃったよ」
「私も大桃くんがいるクラスが気になってた」
「なぜだか皆のなかから小峰さんを見つけるのが得意になっちゃって」
大桃も梨沙と同じくお互いのクラスが気になっていたらしい。
「こうして話してるだけでも嬉しいよ」
「私も!」
「男子と女子、部屋が分かれてるけど、また明日も会えるかな?」
「会えるよ。会いたい!」
「そうだね、あ、じゃあ、またね」
友達と一緒に大桃は去っていった。
部屋には私を含め7人いた。
梨沙、穂乃香、瑠奈、木曽ちゃん、新垣樹里ちゃん、小川理沙ちゃん、アンドリューの7人。
「畳とベッド、誰がどこで寝よっか?」
梨沙と同じ名前の理沙ちゃんが言う。
この部屋は畳とベッドが共存している和洋折衷な部屋だった。
「ももち、ベッドで寝る?」
理沙ちゃんに言われて「あ、うん」とうなずいた。
「じゃあ、私もももちの隣のベッドで寝ようかな」
と言ったのは瑠奈。
「じゃあ、ももちと瑠奈ちゃんがベッドで、あとの5人は畳ってことで」
ひとまず決まった。
「そういえばももち、どこに行ってたの?」
穂乃香に聞かれて梨沙は「大桃と会ってた」と言った。
「わー!入学早々男子と逢い引きかあ!」
理沙ちゃんが目を輝かせながら言う。
「なに、なに、なに、ももち!その男子のこと好きなの?」
アンドリューもつぶやく。
「好き、っていうか。何なんだろう」
好き、という言葉をつぶやいた途端、涙が頰をつたった。涙が次から次へと流れてくる。
みんなびっくりしている。
「…今日はもう会えないのかなあ」
「ももち…」
「会いたいよお…」
やがて声を出して泣くほどになった。
すると理沙ちゃんが梨沙の肩を抱いてくれた。
「わかるよ、その気持ち痛いほどわかるけど。男子と女子、部屋分かれてるし。それに花岡学園って規律が厳しいじゃん?だから我慢しないとさ」
理沙ちゃんが言った。
「あたしも他のクラスに好きな男子いるけど我慢してるよ〜、本当は会いたいけどね〜」
アンドリューも慰めてくれた。
「うん、わかった」
梨沙は涙をふいた。
そしてそうこうしているうちに夕食の時間になった。
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