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第2話 ルビーのような真っ赤な目をした少女
陽気そうな男がGに近付いたことで、それまで彼を遠巻きに見つめていた紳士淑女達が、次第に群がり始めた。
「帝都からいらしたの? 学生さん?」
それでもその中で、一番物怖じしないのは子供であるらしい。
作り物の長い白いふわふわした耳をつけ、ルビーのような真っ赤な目をした少女は彼に近づき、訊ねる。
「そうだよ。夏休みなんだ」
そして彼も、そんな邪気の無さそうな少女には軽く微笑みすら見せる。
「それはそれは。惑星アルティメット。ここはいい所だ」
やや小柄な紳士の一人が不安定で奇妙な曲線形のグラスを手に、歌うような口振りでつぶやく。
「美しい花を散らす冷たい風も、大地を凍てつかせる氷も無い。一年中爽やかな風が緩やかに大地を吹き抜ける。陽射しが皮膚と目を灼くことも無い。雨もまたよし」
「また伯爵の独り言が始まったわ」
ルビーの目の少女は、肩をすくめると、彼に向かってころころと笑いかける。
頭の上で二つに分けた長い髪が、そのたびにふわふわと揺れた。
言い様によっては嫌味にしか取れない台詞なのに、妙に邪気がない。
そういうものかな、とGは軽く目を細める。
そんな少女に向かって同じ色のカクテルを手渡しながら、キムはこつん、と少女の頭を軽く弾くと、揶揄うもんじゃないよ、と片目をつぶった。
はあい、と少女はぺろりと舌を出す。
可愛らしいものだ、とGは思い、口の端を軽く上げる。
そんな会話が聞こえたのかどうか定かではないが、「伯爵」と呼ばれた紳士はつと席を立つ。
キムはちら、とその方向に視線をやり、軽く肩を竦めた。
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