1・婚約話は突然に

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1・婚約話は突然に

 それはヴィエラにとって、あまりにも突然の話だった。  窓の外から暖かな日差しの差し込む、穏やかな昼下がり。  ヴィエラの養父であるエルンスト公爵は静かに告げた。 「隣国ルーンセルンの皇帝が、お前を(めと)りたいそうだ」 「…………はい?」  話がある、と養父に呼ばれてやってきた書斎の中。  部屋に入って向き直るや否や告げられた衝撃的すぎる言葉に、ヴィエラはぱちくりと目を瞬かせた。  (それは、結婚しろということ?)  混乱するヴィエラに、エルンスト公爵はさらに付け加えた。   「お前を、今すぐにでも嫁に欲しいらしい。行ってくれるな?」 「……っ」  有無を言わせないエルンストの視線に、ヴィエラは息を詰まらせる。  これは、命令だ。養父といえど……否、恩義のある養父だからこそヴィエラは逆らえない。  しかも相手は一国の皇帝。  話を聞く限り、この縁談は向こうから持ちかけてきたものだろう。  一公爵の身で、隣国の皇帝などという高身分からの求婚を、おいそれと断ることができるものではない。
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