1044人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの、オズウェル……お仕事は大丈夫なの?」
確かに「オズウェルと過ごしたい」と言ったのはヴィエラだ。
だが、城の敷地内とはいえ外を散歩するほど時間を割いてくれるとは思っていなかった。
こうして外に出るくらいには、仕事の余裕が出来たのだろうか。
「ああ。お前の差し入れのおかげで仕事がはかどった。これで、お前を構う時間ができる」
青色の双眸を少し細めて、オズウェルが柔らかく微笑んだ。どきりとヴィエラの心臓が跳ねる。
ヴィエラがどぎまぎしていると、オズウェルにさりげなく手を取られた。
「え、え、ええっ? オズウェルっ、手……っ!」
大きな手だ。
ヴィエラの小さな手など、オズウェルの手のひらにすっぽりと包まれてしまう。
「何を慌てている。婚約者の手をとることは普通だろう?」
(普通、なの?)
そうなのだろうか。
慌ててしまうほうが、おかしいのだろうか?
男性経験の乏しいヴィエラには判別がつかない。
(でも、これは政略結婚なんじゃないの?)
しかし、政略結婚にしてはオズウェルの態度が甘すぎるような気がしてならない。
最初のコメントを投稿しよう!