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(それにしても、お義父様がこんなに厳しい顔をしているのは珍しいわ)
ヴィエラはちらりと養父を盗み見る。
エルンスト公爵は、ヴィエラにとって穏やかで優しい養父だった。
そんな彼がここまで硬い表情をしているのは珍しい。
(……もしかして、国王様からも何か言われているのかしら)
ヴィエラの住まう国・メーベルは、一年を通して温暖な気候であることから別名『花の国』とも呼ばれている。小国ながら豊かな国だ。
対してルーンセルン帝国は、一年を通して雪が降り積もる寒冷な土地。永久凍土の不毛な大地には実りも少ない。
歴史上、メーベルとルーンセルンは豊かな大地を奪い合って、対立することがしばしばあった。
現在は互いに不干渉の条約が結ばれて、表面上平和になってはいるが……。
これはきっと、政略結婚だろう。この婚姻が、両国の関係に影響を与えることは間違いない。
必ずヴィエラを嫁に出せと、国王からの圧力がエルンスト公爵にかけられていてもおかしくは無い。
でも、とヴィエラは疑問を感じて首をひねった。
メーベル国には王女が三人いたはずだ。ちょうど三人とも結婚適齢期で、しかも未婚。
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