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一国の主である皇帝陛下の結婚相手ならば、公爵家に拾われた出自のしれないヴィエラよりも、王女の方がふさわしいのではないだろうか。
(なんで、私……?)
◇◇◇◇◇◇
エルンスト公爵から話を聞いたその日から、ヴィエラが隣国ルーンセルンへ向かう準備は着々と進められていった。
エルンストはあれからすぐに、皇帝へ婚姻を承諾する返事を出したらしい。
そうして一ヶ月後。
隣国へと向かう馬車に揺られながら、ヴィエラはため息をついていた。
(いつかこうなることは覚悟していたけど……)
ヴィエラはエルンスト公爵夫妻の実の子どもではない。
7年前の肌寒い夜、ヴィエラは何故か記憶を失い、街のはずれをあてどもなくさまよっていた。
ただ一つ覚えていたのは、自分の名前がヴィエラ・ホワイトリーだということだけ。
それまでどこで何をしていたのか、どうしてここにいるのか、ヴィエラには何も分からなかった。
メーベルの国民は、赤毛や茶髪に緑や琥珀の瞳をした人間が多い。
それに対して、ヴィエラは雪のように白い肌に、金の髪、薄紫の瞳。
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