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ヴィエラのもつ容姿は、どれ一つとってもメーベル国では珍しいらしく、街の人はヴィエラが近寄ると慌てたように去っていった。
そんなヴィエラを救ってくれたのがエルンスト公爵夫妻だ。
あの時助けてもらわなかったら、今のヴィエラはいない。
子どもに恵まれなかったエルンスト公爵夫妻は、出自の知れないヴィエラをまるで本当の子どものようにかわいがってくれた。
だから、皇帝と結婚することで恩返しができるのなら安いものだ。
実際この婚姻で、滞っていたルーンセルンとの貿易が再開したらしい。国王陛下もエルンスト公爵夫妻もとても喜んでいた。
(だけど……)
だけど、どうしても気が重い。
ヴィエラは馬車の窓から流れていく景色に視線を移した。
馬車は祖国メーベルをどんどん離れ、遠く離れたルーンセルンへ向かっていく。
草木芽吹くメーベルの景色は、次第に雪の降り積るルーンセルンの景色へ。
気温がどんどんと下がっていくのを感じて、ヴィエラは持ってきた上着を羽織る。
(会ったこともない人の妻になるなんて、私、上手くできるかしら。私は……空っぽなのに)
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