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エルンスト公爵に拾われてから7年間、ヴィエラは公爵令嬢として生きてきた。
それ以前の素養なのかは不明だが、貴族としての礼儀作法が体に染み付いていたらしく、令嬢として問題なく過ごすことが出来た。
だが、心が欠けていて満たされない。
大切なものがぽっかりと抜け落ちてしまったかのような空虚感が、ずっと胸に巣くっている。
(それに――)
ヴィエラの気がかりはそれだけではなかった。ルーンセルンの皇帝にはある噂があるのだ。
考えれば考えるほど気が重くなっていく。
ヴィエラは馬車の中でもう一度、深いため息を吐き出した。
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