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2・皇帝陛下
凍てつく氷の帝国、ルーンセルン。
若き皇帝、オズウェル・ウォード・ルーンセルンが治める帝国で、大陸で最も力を持つ大国である。
一年のほとんどが寒波に見舞われ、季節はほぼ冬しかないといってよい。
氷の帝国に君臨する皇帝オズウェルには、大陸中の誰もが知っている噂があった。
それは、彼の心は統治する土地と同様に氷のように冷たく、部下にも敵にも容赦がない判断を下す冷酷な皇帝であるということだ。
どんな状況、どんな相手であっても、感情に左右されることなく冷静沈着。まるで氷のような心をもっている無感情な男だと評されていた。
ついたあだ名は『氷の皇帝』。
そんな皇帝の妻に、ヴィエラはなる。
正確には、これから一年間の婚約期間を経て彼の正式な妻になるのだが、現状不安しかない。
(今の段階でもう無理な気しかしないわ)
馬車での長旅の末、ようやく皇帝の住まう居城に着いたヴィエラは、通された部屋のソファに腰掛けていた。
こちらで少々お待ちください、と使用人にこの部屋へ通されてからしばらく経つが、一体どうしたらいいものやら。
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