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私は窓を見つめた。少し小降りになってきている。もう少しで止みそうだ。今まで真っ黒だった空が少し明るくなってきていた。
「ごちそう様でした」
「え?」
いつの間にかお姉ちゃんはカップラーメンを食べ終えていた。
「ずっと外ばっかり見て。そんなに気になる?」
「そ、そりゃ! 説得してもらわなきゃいけないからね」
「ふぅん。私にはそう見えなかったけど」
何がそう見えなかったなんだ?
「あ、止んだみたいよ」
雨雲のかわりに夕焼け雲が見えた。私は玄関を飛び出した。辺りは茜色に染まっている。虹は……。
「迎えにきたよ」
「え!?」
何故か渡が家の前にいた。雨も止んだというのにまだ傘をさしている。間抜け男にしか見えない。
「もう帰らな……」
「菜々、見て!」
お姉ちゃんも出てきて空を指さした。
「……虹」
空には大きな七色のアーチが掛かっていた。それも夕焼けに映えてオレンジ色に輝いている虹が。
「綺麗だね。こんなに綺麗な虹見たことないよ」
「うん、本当……はっ!」
虹に見とれていて、思わず渡の言葉に反応してしまった。
「じゃ、そういうことで。お幸せにー」
そういうとお姉ちゃんは家に入りドアを閉めた。
「ち、ちょっと、お姉ちゃん!」
ドアを開けようとしたが鍵が掛かっている。
「お姉ちゃん、お姉ちゃーん!」
私の叫び声が夕暮れの町に響く。お隣さんの家の窓が開いた。私は慌てて渡の傘の中に隠れた。
「む、迎えにって……」
「お義母さんからメールが来たんだ」
「メール?」
「うん。駅前のレストランのクーポンあるから2人で行ってらっしゃいって」
「クーポン……」
お父さんと行くはずだったんじゃなかったの?
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