スノームーン

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スノームーン

 帰路の電車は、比較的空いていて、窓際の席に座ることが出来た。  室温は高めで、外の寒さを忘れて、一日の疲れで手足がジンジンする。  佐々木君は鞄から飴玉を取り出して私にくれた。  ミント味の飴玉。鼻が通ってくる。  電車の窓に、バシャバシャと雨が打ち付けて、外はかなり降ってることが視覚と聴覚で分かる。  佐々木君はスマホを見ていた。そしてくしゃっと笑った。 「雨はすぐに止むみたいです。良かった。今夜はスノームーンですからね」  どうやら2月の満月をスノームーンと呼ぶらしい。  雨上がりの満月となれば、光も鮮やかに見えそうだ。私は月にあまり興味がないから、呼び名は知らなかった。 「スノームーンは、過去のしがらみを手放し、新しいスタートを切れるって意味があるんです。それを願うのが一番いいらしいですよ?」  しがらみ⋯⋯うまくいかない恋愛こそ、私のしがらみだ。  新しいスタートを願えるものならスノームーンを拝んでみたい。
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