何度でも言ってあげる

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 問題文を、はっきりきっぱり発音してやる。  目の前の受験生は、うぐっと固まったような顔をした。  ……頑張れ、チャンスはあと一回だぞ。  私は心の中でエールを送る。 ————Pardon me?(すみません。もう一度言って下さいますか?)  受験生は、苦し紛れの顔を精一杯に取り繕って聞いてきた。  OK、と私は言って、もう一度。さっきより少しだけゆっくりと発音してやる。むぐ、と受験生は焦りの表情を浮かべた。なんとかかんとか、といった調子で、打開策を練ろうと必死に頭を巡らせ始める。  英語検定の面接試験官をやっている私は、その様子を無表情でじっと眺めている。  このような検定試験の面接において。  一度目のPardon me?は、自然な英会話の流れであると判断されるため、減点はない。しかし何度も何度も聞き返してくるとなると、英語能力がないと判断されて、減点対象となる。また、だからといってあまりにも長い時間黙り込んでいたとしても、同じように対処される。  つまり。  ……ああ、減点だな。  きっと、こことかそことかあの辺とかの単語が聞き取れなかったんだろうな、とさっき私が喋った中でも難しめの単語を思い浮かべながら、手元のシートを見やる。何点のマイナス、と、頭の中で計算する。  仕事だからしょうがないけど、ちょっと気が滅入るよなぁ……なんて。  そんなことを思いながら。
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