こころ、売ります。五百円

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 会社に着くと、先に来た同期が係長に詰められていた。今はコンプラとかがあるので、昭和と違って職場で怒号が飛び交うことはない。そのかわり 「何でできないの?」「君、入社して今まで何やってたの?」「これでいいと思ってんの?」「ねえ、何で黙ってるの? 言わなきゃこっちは分かんないんだけど」  納豆のようにネバネバネチネチした精神攻撃が淡々とつづくだけだ。あ、係長が私に気づいた。こっちに来る。  同期にやったのと同じような精神攻撃を私にもやって、それからお仕事タイムがはじまった。はぁ……。  キーボードをカタカタさせながら、今日は何時に帰れるかなと考える。そして、今日は日曜日なので月曜日からまた仕事がはじまる。ああ、つらい。やめたい。ていうか、なぜ私は休日なのに働いているのだろうか。胃がキリキリしてきたので考えるのをやめた。  ブーブー。  胸ポケットの中でスマホが震える。来た! 即購入だ。出品していたこころが売れたのだ。『購入ありがとうございます』とメッセージを打って、発送ボタンを押した。 「ねえ、何してんの?」
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