こころ、売ります。五百円

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 やばい。係長にバレた。 「仕事中にスマホ弄っていいと思ってるの?」 「すみません」 「すみませんじゃないんだよ、仕事中にスマホ弄っていいと思ってんのか聞いてんだよ」 「いえ」 「じゃあ何で今スマホ弄ってたの?」  そんなの答えられるわけないだろ。冷や汗が流れて止まらない。 「すみません」  謝ることしかできなかった。 「何謝ってんの? 俺は聞いてるんだけど、仕事中にスマホって弄っていいの?」  係長の声が一回り大きくなった。こうなったらもう、耐えるしかない。私は項垂(うなだ)れて 「いえ」 「だよねぇ!!!」  ほらはじまった。嬉しそうな顔と大きく張った声。 「ねえ何でスマホ弄ってたの!? 仕事終わってないのにねぇ君、何で? ねえ何でスマホ弄ってたの!? ねえ!!」  シンとしたオフィスに係長の声だけが響き渡る。彼は標的を見つけたときのいじめっ子の目をしていた。それを見るのがつらくて、左に視線をそらす。新入社員の女の子が涙目になっていた。その隣に座る同期と目が合って、気まずそうに目をそらされた。 「何でこっち見ないのぉ!! 目を見て話せよぉおお!!」 「ひっ! すみません、すみません!!」  直角に頭を下げた。そのとき、プツンと何かが切れる音がした。
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