こころ、売ります。五百円

6/7

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 それからは、とんとん拍子に仕事が進んでいった。出世して、私は主任だ。今では当時の同期が部下だ。給料も増えた。  しかし、一つ困ったことがあった。それは、休日に何もすることがないということだ。やりたいことが何もないのだ。  ゲームも、漫画も、スポーツ観戦も何をしても、何も感じなくなってしまった。その代わり、今までは胃痛の種だった呼び出しの電話が神からの祝福のように思える。 「はい、はい。申し訳ありません。はい、かしこまりました。はい、はい。今行きます!」  すばやくスーツを着替え、スマホでバスの時刻表を調べた。次のバスはあと十分で来る。家からバス停まで歩いて十五分ほど。三十分後に来る、次の次のバスに乗ろう。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加