こころ、売ります。五百円

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「すげーよな、主任。最年少で次期係長候補だってよ」 「あの人、土日も出勤してるみたいですよ」 「昭和からタイムスリップしてきたんじゃないか?」  社内を歩くと、いつも私のうわさで持ち切りだ。仕事も順調。資産も右肩上がりで増えつづけて、生活費以外にとくに使い道もないので三百万円だけ貯金を残して、残りはオルカンとビットコインを買っている。  ほんとうに、私の人生は順調だった。昨日もいつもどおり働き終電で帰り、今日もこうして夜十一時ごろまで働いている。  こころがないのは楽だ。何も考えなくていいし、ストレスを感じず余暇も贅沢も必要としないから与えられた仕事だけに全力で打ち込める。  こころがないってのは本当に素晴らしい! キーボードをカタカタタターン! とリズミカルに叩き、さいごにCtrlキー+Sキーを押した。そろそろ終電の時間だ。  パソコンをシャットダウンして椅子から立ち上がり、転んだ。  立ち上がろうとしたが、体に力が入らない。 あ  れ ? お   か     し       い          な
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