始まりの町 バース 1

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少年の身体が熱い。 カゲは、肩に担ぎなおした小さな身体が確実に衰弱してるのを感じた。 いつ、こいつらに捕縛されたのか、どうやって奴らの手から逃げ出したのか わからないが、そう長い間、収監されていたわけではあるまい。 カゲは目の前の巨大なカマキリを見ながら、右足をじりじりと後ろに退いた。 本来ならこの程度の虫けら、一網打尽にするところだが、 闘いが長引けば、少年の命が尽きるかもしれない。 そんなことを気にするなど、俺らしくもない だが、なぜだか、この命の灯を消したくないと思った。  「おおおおおおおおおお」 カゲは低く太い声で咆哮をあげた。 虚を突かれた兵士の一瞬の隙を狙って、血まみれの剣で その大きな複眼を狙い打つ。 「くっ」 小さな叫び声をあげて、兵士は己の身体をそのカマでかばったが 猛毒の血しぶきが彼の身体のあちこちに飛び散った。 ジュウと音を立てて、固い甲殻が焦げた。 カゲは、少年を担いだまま、二、三歩助走をつけ 右足をバネにして大きく飛びあがった。 自分の1.5倍の身長はある兵士の身体をやすやすと越えていく。 「とらえよ。奴をとらえよ」 甲殻を焼かれ、怒り狂った兵士が叫び散らした。 カゲの前にいたやや小柄な兵士たちが五体ばかり いっせいにとびかかってきたが、 カゲはしなやかに剣を左から右へ横一直線に振り払うと 彼らの胴体を真っ二つに断ち切った。 そして再び大きく跳躍すると、闘技場の門の外へと 風のように走り抜けた。
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