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少年の身体が熱い。
カゲは、肩に担ぎなおした小さな身体が確実に衰弱してるのを感じた。
いつ、こいつらに捕縛されたのか、どうやって奴らの手から逃げ出したのか
わからないが、そう長い間、収監されていたわけではあるまい。
カゲは目の前の巨大なカマキリを見ながら、右足をじりじりと後ろに退いた。
本来ならこの程度の虫けら、一網打尽にするところだが、
闘いが長引けば、少年の命が尽きるかもしれない。
そんなことを気にするなど、俺らしくもない
だが、なぜだか、この命の灯を消したくないと思った。
「おおおおおおおおおお」
カゲは低く太い声で咆哮をあげた。
虚を突かれた兵士の一瞬の隙を狙って、血まみれの剣で
その大きな複眼を狙い打つ。
「くっ」
小さな叫び声をあげて、兵士は己の身体をそのカマでかばったが
猛毒の血しぶきが彼の身体のあちこちに飛び散った。
ジュウと音を立てて、固い甲殻が焦げた。
カゲは、少年を担いだまま、二、三歩助走をつけ
右足をバネにして大きく飛びあがった。
自分の1.5倍の身長はある兵士の身体をやすやすと越えていく。
「とらえよ。奴をとらえよ」
甲殻を焼かれ、怒り狂った兵士が叫び散らした。
カゲの前にいたやや小柄な兵士たちが五体ばかり
いっせいにとびかかってきたが、
カゲはしなやかに剣を左から右へ横一直線に振り払うと
彼らの胴体を真っ二つに断ち切った。
そして再び大きく跳躍すると、闘技場の門の外へと
風のように走り抜けた。
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