始まりの町 バース 1

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闘技場の外は暗く深い森になっていた。 砂漠の下になるのだろうか。 空はなく、わずかにあいた天の隙間からうっすらと 光が差しこんでいる。 うっそうと繁る植物は見たこともないものばかりで 幼い頃、図鑑で見た古代のシダ類に似ている気がした。 「まだ遠くまで行ってないはずだ。探せ」という声が 聞こえてきた。 カゲは、小さく聞こえてくる水音をたよりに がむしゃらに突っ走った。 近くに水場がある。 この小さな身体にこびりついた血を洗いながさなくてはならない。 綺麗な水が流れていれば、飲ませることもできる。 急がなければ。 時間がたてば、こいつは死ぬ。 いや、死んだってかまわないはずだ。 いつだって、俺はそうやって生きてきた。 なぜだ。 カゲは混乱してきた己の心を静めようと首をふった。 今は考えるな。考えても意味のないことだ。 こいつを生かしたい。そう思った。 なら、それだけでいい。 その目的のために、やれることをやるだけだ。 追手の声も遠ざかり、しんとした森の中を カゲは、かなりの時間、走り続けた。 皮膚を切る、ささくれだった植物の棘の隙間を くぐりぬけたとき、突然、空間の広がりを感じた。 足元に水が流れている。 水の流れにそって、上流へ向かうと暗がりの中に ぽっかりと開いた洞窟の穴があった。
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