始まりの町 バース 1

1/17
前へ
/43ページ
次へ

始まりの町 バース 1

ずぶ。ずぶ。ずぶ。 果てしない砂漠の中をカゲは進んでいた。 熱い 太陽が体内を焼きつくすようだ。 カゲはボロボロのマントでわが身をおおい 強烈な日差しから自分を守ろうとした。 グアヤキルを出てから何も食べていない。 カゲは水筒をひっくり返し、口にあてがった。 2、3滴のしずくが干からびた舌にあたった。 まだ生きてる。 そして、まだ死ねない。 左足が重い。 ひざから下に麻痺が残っている。 幼いときは走っていた気がする。 あふれる緑に息をのんだこともあった。 あれは、何歳のときだったか。 いや、そもそも俺は今、何歳だ? ずぶ。ずぶ。ずぶ。 砂がカゲの身体をからめとり、蟻地獄にひきずりこんでいく。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加