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「あら、あんた目が覚めたの?」
パチパチと火の爆ぜる音がしてカゲは意識を取り戻した。
身体中が痛い。特に肩から背中のあたりは、木枠でくくりつけられたように
こわばっていた。
ここはどこだ?
土の湿った匂いがカゲの鼻をついた。
外は灼熱の砂漠だったはずなのに、ここは冷んやりと涼しい。
火を焚いていなければ寒いくらいだろう。
「残念だわ。死ぬと思っていたのに」
薄いベールが顔にかけられていて、よく見えなかったが、
火のそばにいるのは若い女のようだった。
「ここはどこだ?」カゲはかすれた声をしぼりだした。
咽喉の奥が締めあげられているようで
ヒューヒューと笛をならすような音がする。
女は火にかかっている鍋を見つめていた
カゲは渾身の力をこめて右手を上に伸ばした。
鉛のような重さの右手とヒューヒューという音。
夢なら早く覚めてくれ。
そう思った時、女がカゲの動きに気付いて、近づいてきた。
「動いてる。気味悪い」
女は間近によりカゲの顔をしげしげと眺めた。
薄いベールが透け、その向こうにカマキリのような
大きな複眼が見えた。
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