始まりの町 バース 1

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「ゲーム?どんなゲームだ」 「別に。単なる殺し合いだよ」女は複眼をこちらに向けた。 ベールの隙間から触覚がちらほら見え隠れしている。 「殺し合い。誰とだ?お前らの仲間か?それとも人間か?」 カゲの脳裏に若い日の記憶が甦った。 首輪をつけられ殺し合う血みどろの闘いを何度も繰り返してきた。 勝たなければ殺される。 裕福な家に生まれたが、捨てられ、闘剣士として売られた。 15、6歳のカゲにとっては、身体ほどもある大きな剣をふるって、 人を薙ぎ倒していた。 「お前にとっては我らの仲間とやり合う方が気が楽か?」 「別に。たいして変わらない」 「ふうん」カマキリの女は面白そうにカゲを眺めると 触覚を伸ばして上から下までじっくりとなめまわした。 やがて顔を使づけると、 「気味が悪い外見だが、ヒトの中では美しいほうなのかもしれないね」 女の眼の中に無数のカゲが映っている。 カゲは、何を見ているかもわからぬ木の穴のような己の目を見つめた。 「お前の目は我らの眼とよく似ている。ただ本能だけがそこにある。 今まで出会った人は、みな、恐怖や絶望や希望としたつまらぬ感情が あふれていた。だが、お前にはなにもない。生きていくために 補食するのみだ。絶望すらない」 カゲは、「絶望すらない」とくり返した。 そうかもしれない。
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