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カゲは独房の冷たい床に片膝を立てて座っていた。
ところどころ岩がむき出しになった壁から、冷気が背中に伝わってくる。
主と別れたあと、先ほどまで女といた部屋に戻されるのかと
予想していたが甘かった。
これでは、まるで極刑を待つ極悪人のようだと嗤いがこみあげてきた。
それにしても腹が減った。
グアヤキルで男を殺してパンを食ったあとは、何も食べていない。
空腹には慣れているが、明日の殺し合いを思えば、何か腹に入れておいたほうがいい。
カゲは目を閉じて、耳をすませた。
小動物が理想的だが、虫でもかまわない。
何か生き物はいないのか。
天井のほうから、かすかに生き物の気配がする。
カゲは暗闇の中、瞳を凝らした。
斜め右上に、空気の通気口があった。
幸い、そこまでの高さは三メートルもない。
何もいないかもしれないが、試してみる価値はある。
カゲは、腰にさしていた大剣を土壁に突き立てると、
その上に足をかけて、音を立てないように、そっと中を覗きこんだ。
鼠だ。
悟った瞬間、カゲは片手で通気口のへりをつかんだまま
足元の大剣を抜き去り、中の鼠を刺した。
まるまると太った一匹を仕留めると、通気口の中から引きずり出した。
こいつが今日の飯だ。
残りの鼠がキーキーと嫌な鳴き声をあげて逃げ去っていった。
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