4.トウマくんの疑問

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4.トウマくんの疑問

「シ、だ!」 「ということは、ソ、ラ、シか」  トウマくんとわたしは近くの喫茶店(きっさてん)で、音のナゾを導き出そうとした。 「単純なんだけどさ、ドが一で、レが二で、ミが三とか?」  首をかしげながら、トウマくんが言った。 「それだと、ソは五、ラは六、シは七ってことだよね」 「三桁か。暗証番号は四桁。なら、一番最初に零を足して……。零五六七」  トウマくんが小箱のロック部分をカチャカチャといじる。 「どう?」 「違うみたいだ」 「なんだかしっくりこないもんね」 「ソ、ラ、シ。ソ、ラ、シ」  トウマくんはぶつぶつと唱える。 「ソ、ラ、シ。ソ、ラ、シ」  わたしもつられてリズムを刻むように呟いた。 「ソは数字だと……ないな。ラもない。シは四とも考えられるけど……」  トウマくんは思いつく限りのアイデアをアウトプットしていく。 「あ!」 「ジュリ?」 「それだよ!! それ!」  心の奥から、じわじわと興奮が湧き上がってくる。 「なにかわかったのか?」 「トウマくんの「シは四」でひらめいた! 音を数字にあてはめるの!」 「あ、ああ。でも、ソもラも数字として読むのは難しいぞ」 「そのままならね。ドレミファソラシドは、日本語だとハニホヘトイロハ。つまり、ソ、ラ、シはト、イ、ロ」 「トは十、イは一、ロは六ってことか」 「そう! つまり、一零一六」  わたしたちは視線を合わせて、大きくうなずいた。  トウマくんが小箱の鍵に手をかける。 「「開いた!!!」」 小箱の底には、一枚のメッセージカードが入っていた。 『おめでとう。君たちの勝ちだ!』  カードを手に取り、わたしは読み上げる。 「これ、父さんの字だ」 「あはは! わたしたち勝ったんだ。最高!」  やったーって思ったのに、トウマくんは複雑そうな顔をしている。 「トウマくん?」 「なあ、ジュリ。カードに書かれている「たち」ってどういう意味だろう?」 「……たしかに、ゲームをしているのは、ユウタさんとトウマくんだよね。これじゃ、他の人が協力したことがばれているみたい」 「ああ。言われてみれば、こんな音が絡むナゾ、ジュリがいなければ絶対に解けなかった」 「それか、音楽やってる人だね」 「うん。……父さんは、俺が誰かを頼ることを見越してたってことか? ……今回はたまたま、ジュリが近くにいてお願いできたけど、普段の俺なら人の力を借りるなんてしないだろうし……。ああ、でも、音が関係しているってわかったら、母さんか、ジュリに相談はするかもしれないな」 「ねえ! わたし、思うんだけど、あえて誰かの助けがないと解けないようにしたんじゃない?」 「……ありえるかも」  トウマくんはそう言ったきり、黙り込んだ。  やがて、自分の中で納得がいったのか、「うん」とうなずき、氷が溶けて薄くなったカフェラテをストローで一気に飲みだした。
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