届けたい

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「大丈夫……大丈夫……きっと成功する……」   舞台裏の床に視線を落とし、小さく呟く。  幾度となく携わってきた劇団公演での初の演者。  裏方で過ごしてきた5年間は無駄にはならない……はず。  出番まで、舞台ソデで待機しながら毎公演頑張っている劇団員たちの表現する声を聞いていた。 (みんなよく声が通ってるな)   どうして今回演者になったのか……。今でもどうかしてる、と思う。  俺はあがり症で、人前で発言しようとすると焦るのか、吃音が出てしまう。  テンポのよい会話ができないため、役者には向いていなかった。  だけど演劇から離れるという選択肢はなかったし、何より心を沸き立たせる。  見ているだけじゃもどかしくて、当時気に入っていた劇団へ裏方専門として入団させてもらい今に至るのだが……本来なら演者に回る気は1ミリもなかった。  俯いて、自分の台詞をぶつぶつと確認する。  (もうすぐ出番だ)  心臓が強く跳ねる。    (緊張する)  ドクドクと脈打つ音が、耳の奥でうるさい。  (だけど……)     あの子はきっと、もっと、張り詰めた心と闘っている。  (だから……俺は千秋楽までちゃんと演じてみせる)
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