届けたい

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 私は明日、手術を受ける。  手術前検査を受けて、一息ついて携帯電話が使用できるエリアでいつも聞いていたポッドキャストに耳を傾けた。    (落ち着く声……)  低すぎず高すぎず、朗読に向いている声だと思った。    (あ、この話好きかも……)  以前に聞いた話に出てきた人物がサブキャラな感じで出てきた。    視力が落ちてから大好きな読書から遠ざかり、鬱々とした日々を過ごしていた私に見かねた母が教えてくれたいくつかのポッドキャスト。  その中で今も聞いているのが『Noriの朗読と珈琲タイム』だ。  純粋に朗読だけの配信が耳に心地よく、何度も何度もリピートしてストーリーを一緒になぞれるほど。  初めて朗読だけではない配信、リスナーへの問いかけがあったのは3ヶ月前。    「あなたのお気に入りの一冊を教えてください」という内容のものだった。  本が大好きな私には嬉しすぎて、ボイスメールを送ってしまったくらいだ。ちまちまとメールを打つのも見えにくい視界ではしんどかった、というのもある。  後に羞恥心が大暴走したが、2、3日して声音の通りの柔らかい返信が届いた。  嬉しかった。  スマホの読み上げ機能を使ってメールを聞いた。  リスナーとNoriさん自身のお薦めを交互に配信すること、メールの着歴の順に配信していくことを記してあり、最後にこれからも宜しく、と締めていた。  (とても丁寧な人なんだなって感心したっけ)  メガネでの矯正も困難になり、角膜移植を受けることにしたのはどうしてもこの目で見たいものがあったから。  (……Noriさんの初舞台) 
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