幸せ定期便

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 鰻屋はオフィスの入っているビルの裏手にある路地のその先にあった。  須藤さんの言う通り、一見蕎麦屋のようにも見える店構えは庶民的だったけれど、通りの方からも感じられる香ばしく食欲をそそるその香りは明らかに鰻屋のものだった。 「えーと……」  ふっくら香ばしい鰻のことで頭がいっぱいで、気が回らなかったけど……。  これって、ランチデート……。  いやいやそんな訳ないじゃん。須藤さんはプロジェクトの打ち合わせをしたいって言ってたし。  でも……。  これはどうしたって意識しちゃうでしょう。    だって、これは近い。  近過ぎる。  庶民派の鰻屋はテーブルも庶民派サイズで、その端正な顔が手で触れられぐらい近くにあるのだ。  けれど向かい合って座る須藤さんは、気にするふうでもなく、穏やかな笑顔を浮かべている。 「いや、何か暑いですねー」  私は手でパタパタと扇いでみせた。 「そうですか? こっちは結構冷房の風きますよ。替わりましょうか?」 「いえいえ、大丈夫です。何か、最近仕事に燃えてるから暑いのかなー、なんて。はははー」 「根本さん、さすがですね。プロジェクト、絶対成功させましょうね!」  真面目にそう言ってくる須藤さんに、「そうですねー」とか返しながら、私は彼に見えないよう何とか息を整えた。
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