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「須藤さん、この資料なんですけど……」
会議室を出たところで、私は背の高い後ろ姿に声をかけた。
「ああ、それはね……」
私のどうでもいい質問に、真剣に答える須藤さん。
須藤さんは真面目だなあ……。
私の神経はその端正な顔立ちと、耳に心地よい低音ボイスに全力集中で、その内容なんて頭に入ってこない。
「……是非ともこのプロジェクトを成功させたいと思っているんだ」
須藤さんはそう言って厳しい顔をしてみせる。
須藤さんはこの間、ちょっとした発注ミスをしてしまったと、彼と同じ課の歩美ちゃんから聞いた。
製品管理部の機転で事なきを得たらしいが、須藤さんはそれをずっと気に病んでいるらしい。
そもそもそんな重大なミスじゃないし、ちゃんとチェックで発見できて無事納期にも間に合ったのにも拘らず、杉野課長はずっとネチネチと文句を言っているのだそうだ。
時々、エレベーターホール等で、暗い顔をして佇んでいる須藤さんを見かけることがある。
ここは是非ともこのプロジェクトを成功させて、須藤さんの株を上げさせなければ。
「はい! 一緒に成功させましょう!」
正直、社内プロジェクトなんて面倒くさいだけだと思っていたけれど、須藤さんの為ならば話は別だ。
私は彼にとっておきの笑顔を向けてみせた。
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