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「ありがとう、本当にありがとう」
弁護士である友人が優秀なおかげか、半年ほどで決着はついた。
「いや、林道さんが賢いからだよ。前からなにかあったときのためにボイスレコーダーで録音してたみたいで、証拠がバッチリだった」
「そっか……よかった」
「次はお前らが幸せになれよ」
ポンっと俺の肩をたたいて去っていく友人はかっこいい。
「痣、きえてきたね」
成立するまでは触れないと決めていた林道に、あれ以来初めて触れる。
「うん、あの日から会わないように弁護士さんがしてくれたし。さすがに大企業の社長が禁止されてるのに会いに来ることはできないからね」
やっと何もかもがなくなって、すっきりとした顔をしていてあの日とは大違いの表情にホッとする。
「たしかにな。世間体があるもんな」
「またきたらどうしようとか不安はあるけどね」
「大丈夫、俺が追い払ってやる」
実は半年のあいだに一度だけ俺の実家に乗り込んできたことがあった。
親から連絡をもらってすっ飛んでった俺の目に入ってきたのはガタガタと震える林道の姿。
「見てわかんないすか?怯えてるって」
「知るかよ、俺はこいつと話がしたくてきたんだ!弁護しなんか通さずにちゃんと話せ!」
林道に近づこうとする男の前に立って、必死に林道から守る。
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