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地味で平凡で、そこそこの成績。とりたてて美人でもないし、スタイルがいいわけでもなし。
そんな大人しくて目立たない生徒だった私は、それそのものがちょっとだけコンプレックスだった。当時、異世界転生系ラノベとかを読み漁って憧れていたようなタイプである。退屈な日常から抜け出して、ちょこっとだけ刺激的なことをしてみたい。されど不良生徒がやるようなお酒とか煙草とか夜遊びとか(当時の私がイメージする不良なんてそんなもんだった)をやる勇気もなし。
そんな頃のことだ。
十四日に合格者発表があり、どうにか私も、それからユズもギリギリ志望した高校に行けることが決まり、受験勉強から解放された頃合いである。試験が終わってから卒業式(その年は二十三日とかそれくらいだったと思う)は三年生は部活もないし、自由で、どこか気が抜けたように過ごす人も少なくないのが常だったのだ。
まあ入る事が決まった高校からちょこっと宿題が出ていたが、それはそれである。
どうせ適当に終わらせるかサボるかするであろうユズが、“最後に思い出作りをしよう”なんて言い出したのだ。
「あたし聞いちゃったんだよ。うちの学校、怪談がいっぱいあったんだってさ!いやーもっと早く知りたかったわー。周りにそういうの好きな子全然いなくてさあ」
「怪談ねえ。いつの時代もみんな好きだよね、そういうの」
「そりゃ好きだろ。自分達が普段通う学校に、ちょっと刺激的な要素があったらおもしれーじゃん?勉強とか部活とか恋愛してるだけじゃつまんねーっていうかさー。いや、部活は楽しいし、恋愛は縁がなかったのでお察しってやつだけど」
「あはは……」
ユズはものすごくモテていたのだが、本人がまったく気づいていなかったのだ。彼女に好意を寄せている男子を何人か知っていたが、彼等は皆口をそろえて“だってあいつ、俺のことなんか男として見てないだろうし”ってやつだったのである。多分ユズの方も“あたしの事なんか誰も女として見てねえだろ”となっていたのは容易く想像がつくが。
彼女が提案してきたのは、夕方の特定の場所で、特定のことをすると異世界に行けるらしいから試してみようぜ!というものだった。なんでも、この学校は“有識者”いわく“とても不安定な場所”に立っているらしく、ふとした拍子に異世界に繋がってしまう場所がいくつもあるらしい。なお、その有識者って誰よ?というツッコミは野暮である。
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