ドア、ドア、ドア。

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ドア、ドア、ドア。

 誰に話しても全然信じて貰えないんだけど、これは本当にあった話。  オバケが出たわけでもない。  サイコパスに追いかけられたわけでもない。  それでも考えれば考えるほど怖くてたまらないから、ここに書いておこうと思う。何か知っている人がいたら、このブログのコメント欄にでも書きこんで教えてくれると嬉しい。未だにあれが、どういう事件だったのか私にもわからずにいるから。  私が通っていたN中学校は、結構ボロっちい学校だった。そういう歴史にちっとも興味がなかったので詳しい話は知らないけれど、戦前からあったとかなかったとかそう言う話があるくらいには古い学校だったと言っておく。  もちろん、いつまでも木造だったとかそこまでは言わない。ただ昭和に建てられた(建て直された?)とされる校舎は結構ボロボロで、雨が降ると雨漏りするなんてこともざらにあった。  それこそ体育館でイベントをやった時、みんながテンション上がって飛び跳ねたら床が抜けたなんて事件もあったらしい。  それなのに公立校で予算がないからなのか、なかなか大幅なリニューアルがされず、ちょっとした地震が起きるとぎしぎし軋むような音を立てる校舎で私は三年間を過ごしたわけだ。  学校はボロかったしエアコンの効きも悪かったが(小学校はエアコンがない教室もあったので、中学はだいぶマシだったのだ)、それでも友達には恵まれたので嫌な思い出はほとんどなかったと言っていい。三年間吹奏楽部の活動は楽しかったし、大人しい学校だったということもあってクラスが目に見えて荒れるようなこともなかったはずだ。  ただ一つ、彼女に関するこをと除けば。 「やっほおおおおおおお!今日も元気してるか、まっちゃん!」 「おはようユズ。今日も元気だねえ……」 「何を言う。元気に過ごさなければ人生損というものだぞ!たとえテストの成績が壊滅的に悪くて、先生に呼び出されたとしても!それで補習が確定したとしても!」 「そ、そこはもうちょっと気にしようよ……」  松坂ユズ。  三年生の時同じクラスだった、私の親友だ。  先に言っておく。彼女は、ひねくれ者の私から見ても“いい子”だった。背が高くて美人で、それでいて一切気取らない。強いて難点を上げるとしたら勉強嫌いだったことくらいだが、面倒見はいいし運動神経は抜群だし、体育祭ではヒーローのような存在だった。男の子も女の子も先生も、彼女のことを心から嫌っているような人はほとんどいなかったことだろう。  そんな彼女とは同じ賃貸マンションに暮らしていて、幼稚園からずっと幼馴染だった。三年生で同じクラスになれたこと、彼女が私の親友であることはひそかな自慢だったのである。  残念ながら成績の問題もあって、高校はバラバラになってしまうことが確定していたが。違う高校に行ってもずっと友達でいような!と当たり前のように口にする女の子で、そんな彼女が私も大好きだったのだった。  そう、嫌な思い出というのは、彼女から何かされたから嫌だったわけではない。  ただ、ひたすら私が後悔しているだけだ。 「なあ、ちょっといいかまっちゃん。もうすぐ卒業だしさ、ちょっと面白いことやってみねえ?」 「お、お?何企んでるのかな?」  あの日、彼女を止めるどころか、悪乗りしてしまった自分を。
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