No.1 はじまりの風

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No.1 はじまりの風

 人は人生に一回だけチャンスが巡ってくるという。それを逃すと人生が変わってしまうこともあるというのだとか。  私は、そのチャンスをどうやら逃がしてしまったらしい。  「風花(ふうか)ちゃん、放課後どこかに行かない?」  クラスメイトの汐里(しおり)が声をかけてきた。  「いいね、行こう」  いつもなら断るはずの誘いも、今なら乗ってしまう。  昼食の弁当を食べながら、教室の窓から見えるグラウンドを眺める。    「今日も、やってるな・・・」  今日も駅伝部は昼休みも練習をしていた。  「どうしたの?風花ちゃん」  「うぅん。なんでもないよ」  私は、つい最近まで駅伝部に所属していた。次期部長といわれていたらしい。もうこの膝では、走ることは出来ない。  だから、私は走るのを辞めた。また別の道もあるはずだから。  あと一回だけ叶うなら、まだ走っていたかった。どんなに厳しい練習でも。  
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