同じ顔

1/1
前へ
/13ページ
次へ

同じ顔

 冴木凌空と冴木大空。  彼らが一卵性双生児の双子だったなんて知らなかった。  あんなに尊いイケメン顔が二つもこの世に存在してたなんて…。  二人はどちらがどちらなのか全くわからないくらいそっくり。だけどその性格は全く違うみたい。  どっちだろ。あの時の人…。  どっちだろ。私の運命の人…。 *  朝、学校に向かう途中、後ろからきた誰かとぶつかった。 「いたたた…。」 「ゴメン、大丈夫?」  向こうも転んだのにこっちの心配をしてくれた。 「大丈夫…。」 「うわ。バックの中身出ちゃってるし。」  メガネケースとポーチを拾ってくれた彼の顔を見た途端、心臓が飛び跳ねた。  うわ。あの、イケメンだ!  無言で散らばった荷物をかき集め慌ててその場を立ち去ってた。  慌てたのは時間が無かったからじゃない。  目があったら息ができないほどドキドキして。苦しすぎてその場にいられなかったから。その顔があんまりにも眩しすぎて。  大学構内で見かけてたあのイケメン顔はよく知ってた。  まさかそんな彼とこんなに至近距離で朝から見つめ合うとか、想像もしてなかったし。  同じ空気を吸うなんて、一生あり得ないと思ってた。  しかもあんなに優しい目で大丈夫?なんて聞かれたら大丈夫としか言えない…。  講義が始まってもこの通り上の空。だってさっきのあの奇跡のようなシーンが頭から離れないから。  彼のあの眼差しが私の目の奥に突き刺さり今も刺さりっぱなし。その時の衝撃がまだ残ってる。  だから気がつかなかった。  お財布を落としてた事…。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加