コロッケパン

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コロッケパン

 私の手の甲が誰かの手に隠れた。 「あっっ!すいません。」  慌てて手を引っ込めた。 「あれ?また君か。」 「あ。どうも。」  あれから数日後。  購買部で最後に売れ残ってた人気のコロッケパンを取ろうとしたら誰かと手が重なった。  あわてて見上げたらすぐ横に、あの彼。 「あ。ごめんね、どうぞ?」  ふぅ。優しい方の、彼だった…。 「あ、いえ、どうぞ?」  いつもすぐに売り切れちゃう人気のパン。 「僕も好きなんだ。これ。」 「あ、どうぞどうぞ。あたし、こっちにするから…。」  となりの焼きそばパンを掴みレジに差し出した。 「これ下さい。」 「え?そっちでいいの?」  素敵な彼が目をキョロキョロさせてる。ウンウンと頷きお金を払って焼きそばパンを受けとった。  レジ横の廊下の向こうで壁に寄りかかってこっちを睨んでるのは、もう一人の彼の方だ。  すると向こうから女の子が近づいて来た。 「あ!リクじゃん。今日行くでしょ?飲み会。」 「あー。どうスッかな。」 「心理学部と社会学部で合コンだって。ミオちゃんからリクとソラが来るって聞いたけど?」 「あー。はいはい。もう、わかったわかった。」 「じゃあ後でね。」 「後でな…」  あっちの彼はリクって言うんだ。  合コンてまさかあの合コンじゃ。無いよね…?  ミオちゃんてあの実緒ちゃんじゃ無いよね…? *  それは今から遡ること一日前。  同じ心理学部の実緒ちゃんがニコニコしながら近づいてきた。 「ねぇ美月?明日、暇?」 「あー、別に用事無いけど?なんで?」  どうせいつも暇だよ。 「よし。じゃあ明日帰らないで待っててね…。行くとこあるから。」 「え?どこ?」 「いーから。来ればわかる。」  
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