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10、ルール違反
俺は佳奈のスマホに電話を掛けた。
暫く、佳奈は出なかったが、しつこく何回もかけたら漸く出た。
「チケットが無かったらスマホもダメなの!」
「チケットは今度纏めて渡すから一つ質問してもいい?」
「なぁに?」
「佳奈は僕が君を愛しているってどうして分かるの?」
「最初に呑みに行った日に言ってたじゃない。アイシテル、アイシテルって、で此処に入ろうってホテルに行ったじゃない。好きな人とやることだって教えてくれたじゃない」
俺は言葉も出なかったよ。酔っぱらいの誘惑を真に受けて信じてた…
「セックスはやるもんだって教えてくれたよね」佳奈の声は明るかった。
世間知らずの当時は多分18歳の女の子をオジサンがホテルに連れ込んだんですか……俺は自己嫌悪で落ち込んでしまった。
あのチケットを100枚書いた佳奈の気持ちを考えた。
「もう一回」と言いながら100回は許して会ってくれるということだったんだろうと思った。
あのスイートルームに怒ったのだって「特別感」があり過ぎて本当に分かれる気だと察したからなのだろう。
佳奈は最初から何一つ嘘はつかなかった。自分を良く見せようとかいう姑息な演技もしなかった。きっと佳奈は着崩れた着物など、たやすく自分で直せる育ちだ。
「山上さん、大好きですぅ」
あれはまだ、駆け引きも知らないほど子供で素直だから言えた言葉なんだ。
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