12、One more time

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12、One more time

 佳奈は、泣き止むと黙って席を立って2000円をテーブルに置いてテラスから出て行った。  俺は黙って川を見ていた。  自分のアパートに帰って、俺はベッドに寝転がって天井を見ていた。佳奈はセフレみたいなもんだと思っていた。  セフレなんて関係、本当に成立するのだろうか。 同じ相手と肌を重ねていたら、心が動くのが人間じゃないか。 元々俺は二股とかできる性質(たち)の男じゃない。だから、莉帆さんとの縁談が舞い込んで佳奈と別れようとした。  どこで間違っちゃったのかな……と思った。男は泣いちゃあいけないんだ。 そう言い聞かせても涙が出てきてしまう。身から出た錆だ。悪いのは自分だ。最後は、あんなに佳奈を傷つけた。  いつもニコニコしていた佳奈が初めて俺の目の前で泣いていた。 謝りたくても、俺はチケットを持っていない。俺がチケットをその日に捨てたと言ったことにも余計に佳奈は傷ついだんじゃないか・・・  うじうじ、自己嫌悪を蒸し返していたら、インターフォンが鳴った。  涙を拭いて、眼鏡をかけてドアを開けたら佳奈がいた。  佳奈は大きなスーツケースを下げていた。 「もう、スイスへ行くの?」 と俺が訊いた。 「スイスは行かない。此処に住むの。だって私、定期を持っているでしょう?」
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