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4、手紙作戦
佳奈には日本語が通じないのかとまで思った。莉帆さんとお付き合いしたくても俺は本物の下衆野郎になれないんだ。二股なんて掛けられない。
佳奈と外で会うと、ベッドに辿り着いてしまう……これは、会社で言うしかない。
ラインで佳奈を昼休みに呼び出した。机の所まで来てもらった。
佳奈に口で言う事も出来なくて、その前の夜、丁寧だが短い手紙を書いた。
『私には結婚を前提にお付き合いしたい人がいます。佳奈さんとのお付き合いを続けることはできません。分かってください。私は、佳奈さんと結婚する気はありません。ごめんなさい。』
文才の無い俺が簡潔に書いた心を込めた離縁状を佳奈は受け取り、開いて読んだ。佳奈は、それを読むと折りたたんで俺に返した。そして、にっこり笑って言った。
「好きじゃない人と、そんなに結婚したいの?じゃあ、仕方ないね」
佳奈は俺の机から、小さなメモ帳を手に取ると、胸に刺したボールペンで何やら書き出した。書き終わると、そのメモを俺に渡した。
「もう一回やろうよ」と書いてあった。
やろうよ……って、本当に情緒も教養もない女だなと思った。
俺は佳奈に呆れた。
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