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7、株主総会
俺の所属は総務部だ。絶対に間違いは許されないイベントが株主総会だ。
招集通知の作成、発送、会場の予約、設営、当日配布の資料作成……当日は受付もだ!
今年は個人の大株主の出席が多い。何か粗相でもしでかしたら未来はない。
会場はホテルの大ホール。俺は受付をしていた。個人の大株主は金持ちが多い。着ているものからして違う。普通のスーツのようで普通じゃないのは見て分かる。リーマンのスーツより下桁の0が3つは多い感じだ。
年配の男にくっ付いて佳奈が現れた。
佳奈は、これもまた下桁に0が4つは付いていると思われる仕立てのいいワンピースを着ていた。髪の毛もボブになっていた。
ああ・・・こいつ、愛人になっちゃったんだと思った。年配の男は隣の同僚の方に行って受付を済ませて会場に入っていった。佳奈は、そのまま中には入らずロビーのソファーに座っていた。
株主総会が始まった。俺は会場に居なくてもいい。受付で待機だ。
俺の方を佳奈は全く見ようとしない。途中で飽きてしまったのか、足をバタバタさせたり、欠伸をしていた。こういうところは全然前と変わらない。今は仕事中で、俺は此処から一歩も動けない。佳奈を見ているだけだ。
総会が終わって、株主たちが外に出てくると、文人たちは慌てて動き出した。
大きな声で佳奈が「パパ!」といって先ほどの年配の紳士の腕を掴む。
「お利口に待っていたから約束よ。ご褒美買って」
「佳奈子は本当に子供だな。何を買ってほしいんだい?洋服?新しい時計?アクセサリーかな?」と紳士がニコニコする。
「パパ、佳奈子が欲しいのはアレ」
佳奈は俺を指さした。
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